せっかい(※黄黒で黒←高) 







        「オマエ、もう食われちゃってんだろ?」
        不快も、昂りも、辱めの表情も、どれも見逃さぬよう凝視する。
        いざ目の前にすると、頬肉の薄い、地味な印象の少年のどこに
        緑間があれほど惹かれているのか判断に困る。

        「なあ。黄瀬クンはエッチする時、優しい?
         オマエってパっと見ぼんやりしてるけど、すげぇ良かったりすんの?どういう風によがんの?」
        首元に腕を回し、力づくで頭部を抱え込んだまま、耳元で畳み掛けてみる。
        「声聞きたいなぁー、なんて。」
        我ながら下品だなと思いながら、色好い反応を見たいが為に、挑発の言葉を選んでけしかけてみるが
        黒子は口を閉じ目を伏せ、無反応を貫いていた。

        「オイ、面白くねーな。」
        「まっさかさ。雪辱の後半戦開始早々、黄瀬クンに取られてるなんてさ。俺は夢にも思わなかったわけよ。」
        「なんで真ちゃんはこの事知らなくて、俺が先に知っちゃうかねぇ。」

        無言の相手に向け、さらに一方的な言葉を並べ立て
        黒子の自由を奪ったまま、前半身を壁側に押しつける。
        学生服の白いシャツの裾を一気に捲りあげると、運動選手にしては筋肉控えめな背中が現れた。
        「へえ、綺麗な背中してんじゃん。すべすべ。」
        小さな肩甲骨が浮き上がり、染みも出来物も見当たらない。
        背骨に沿うよう手の平でなぞっていくと、温度差のためか黒子の背がすくみあがった。
        「やめてください。」
        毅然として、怒気をはらんだ黒子の声は人通りのないその場によく通った。
        しかし声と違って身体は動きを制限され、背をよじっても抵抗にならない。
        非力な腕力、コイツは本当に身体能力には恵まれていない。
        「まあまあそう言わずにサ。しれっとしてるけど、ちゃんと抜いてるわけ?」
        構わず、背中を降りて腰元に辿りついた指先が、さっきは見つけられなかった内出血の跡を掠める。
        消えかかっているものも含め左右3箇所、腰より少し下の脇寄りに散っている。
        おそらく数日前の色事の名残だろう。
        「わりぃ、無粋な質問だったわ。」
        「黄瀬クンが全部やってくれるか、そりゃそうだよな。大事にされてんデショ?」
        黒子はここまで一貫して答えず、背中を強張らせたままだった。
        与えられる感触になびかず、艶声を耐える姿勢は、これはこれでそそられるものがあるのかもしれない。
        反応もないので、と捲り上げた背に浮かぶ左右の肩甲骨の、ちょうど中央に狙いを定めて
        数秒間強めに吸い付く。固い背中をすべる、湿った舌の感触。
        さすがの黒子も腕の中でもがき出し、高尾の膝を後ろ向きの脚先で何度も蹴り上げてきたが
        たいした力は入っていなかったので無視した。

        わざと音を立てて唇を放すと、背中に1つ、ささやかなキスマークが咲いていた。
        「鏡見ても確認し難いとこ、付けてやったからさ。
         この跡が消える間ぐらいは、オレと真ちゃんに操を立てて、アイツとエッチしないぐらい出来るよな?」
        捲ったシャツを元に戻してやり、黒子の顎に手をやってその顔を覗き込む。

        「真ちゃんもカワイソウに。今でも健気に、あきらめてねーのに。」
        これが今日、一番言いたかった事。
        告げた瞬間、黒子の両眼が瞬いた。
        力で押さえつけられ不快な格好をとらされたまま、少しだけ見開かれた瞳に戸惑いが滲んだように見えた。
        けれどすぐ、先人曰く何を考えてるのか分からない目で睨み返されたので気のせいかもしれない。
        反応があっただけでも収穫だ。
        拘束した腕を手放した途端に突き飛ばされたが、一発殴られるぐらいは予測をしていたため
        飛んできた右手はかろうじて避けられた。

        「またな。」
        なんて、颯爽と去ってみたりして。
        きっと黒子はあのマークを隠すために黄瀬との接触を避けるだろう。
        そして黄瀬はそれを疑わしく思うだろう。脱ぐ、脱がないのやり取りになったら思惑通りだ。
        親友の叶わぬ願いにとどめを差した事を思えばこれぐらい、きっとバチは当たらないだろう。







        
駆け足気味なこっちが本題だったりして。