夏の潜熱(※緑黒) 







        「あんまり、触らないで下さい。」
        擦り合わさる表皮の体温。赤く腫れた小さな跡が数箇所、1つずつ丁寧に歯をたてられる。
        わずかに残る痒みを全て、柔く優しい痛みで相殺されるものだから堪らなく、
        半身を前屈みに折らざるをえない。

        「どの程度刺されている。」
        「足・・・・・と腕を少し。キミが今、噛んだ箇所だけ。」
        おそらく、今の今まで、緑間が口に含んだ部分で全てだ。

        「・・・・・甘肌のヤツが、よく蚊に刺されると言うが。」
        「甘い、ですか・・・。」
        「血も肌も、お前を形取るものに、甘ったるい部分など何処も無いだろう。」
        そう言った緑間の上に跨がされた格好のまま、軽々と抱えあげられる。
        膝立ちさせられ、目の前の頭部にしがみ付くしかない状態で、
        近づけてしまった素肌の胸元を、緑間の唇に捕らえられ、吸い付かれて。
        甘くなどないと言ったばかりなのに、緑間は湿ったままの唇で胸元を下り、肌を口に含む動きを止めない。
        見上げた黒子の反応を伺いつつ、時折、口端に笑みを浮かべて明らかに楽しんでいる。

        しがみ付いた先が指通りの良い髪の毛では、支えるあてもなくまた不安定で
        黒子は思わず膝から上を震わした。
        緑間の眼鏡をたどたどしい手つきで外し、さらに近く、腕で囲うようにしてしがみ付く。
        ゆるく縛ってくる仕草の黒子の表情を仰ぎ、盗み見た緑間は、一つ、口付けてきた。

        「そんな風に、しないでください、・・・・・・・早く、」
        先の展開を促すも、背後に回っていた手のひらは肩甲骨を指先で引っかいて、
        背筋の線を滑り落ちるようになぞりだした。指先に巻かれたままのテーピングがさらさらと乾いた感触で
        下方へ辿り、普段陽に当たらない部分の素肌を撫ぜてくる。
        「文句ばかりだな。」
        胸元から聞こえる声と同時に呼気が当たり、また和えかな刺激となる。
        「・・・・・だから、触らないで。」
        聞き入れてもらえないと知りながら、黒子は眼を閉じ口先だけで、前後からの絶え間ない感触に抗った。


        そうしているうちに次第に、黒子の口から静かに漏れだす熱を濃くした声を聴きながら
        こういう時の声は甘かったか。と緑間は言葉に出さず、密かに訂正をした。










            蚊に嫉妬する緑間とかが書きたかったんじゃなく、
            高尾が「真ちゃん、エチーの時テーピング外してんの?(笑)」て黒子に聞く話だったんですけど
            どうも間違えたようです。