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             溺愛パレット(赤黒>黒子総受)  ※女体化注意!







        性別が反転した黒子を慰みものにするかのような、赤司の含みのある物言いに腹が立ち
        その場に居るのが耐えられなくなった。
        自販機前の廊下から駆け出してきてしまった黒子はふらふらと自分の教室へ戻ってきていた。
        先程手渡されたペットボトルをようやく一口飲んで、窓際一番後ろの自分の学習机へ着席する。
        ホームルームを終えた教室はすでに誰もおらず、室内灯も消されていて薄暗かった。
        普段はオレンジ色の夕陽に照らされ穏やかな室内も、今日はそっけなく冷やかな印象で居残りの黒子を迎える。
        窓際から見下ろす濡れたグラウンドには野球部や陸上部の掛け声などなく、
        遠くの教室から室内楽のゆったりとした演奏が聞こえていた。
        
        身体が重たい。頭も重たい。支えの足りない身体が恨めしい。
        毎日板書を書き写している自分の席からの教室の景色がいつもと違うことに黒子はがく然とした。
        少し身長が縮んでいるからか、教卓までの距離が遠く感じる。椅子がわずかに高いため足裏が床に付かない。
        内面の感覚と、それを覆っている外面のフォルムにずれがあることを感じてはいたが、
        日常生活に支障が出ることを改めて痛感する。いつもなら座ったまま掴めるはずのカーテン紐まで手が届かない。
        目測と、実際の動きが異なる身体の動きにくさは酷いものだ。
        普段通りの認識のままでは、至る所がしなやかにふんわりとした印象の少女の身体はうまく動かせない。
        男子の精神を女子の身体がくるんでいる狂気じみた感覚など、誰も共感できはしないだろう。
        暗い教室の中でたった独り、黒子は机にうつ伏せて目を閉じ深く息を吐いた。
        赤司に解決する気がないのなら自分自身の力で元の身体に戻らなければならない。
        賭けの賞品とされた自分が、なぜ女子にならなければならなかったのか。あの色の変化するカードは一体何なのか。
        赤司の口ぶりからして、この身体への解決策は自分に危害を加えるようなことなのだろうか。
        中途半端に知識をつけた黒子はさらに状況が分からなくなってしまった。うつ伏せた肩に圧し掛かる徒労感がある。
        あまりの気だるさに一度机に身を預けてしまえば、ひんやりとした板の感触が心地よくて目を開けられない。
        部活動の演奏に交じる、雨だれの不規則に落ちていく音を聴きながら黒子はそっと意識を手放した。



        突然、身体に覆い被さる影があった。
        机に突っ伏していたはずの黒子はいつの間にか、机上に背を預けた形で仰向けに押し倒されていた。
        窓際の一対のカーテンは隙間なく閉められており、教室内には蒸した空気と暗い影が充満している。
        あいまいな視界の中で異様なくすぐったさを感じ胸元を確認すれば、黒子の身体に重なる男がいた。
        「……何、してるんですか。」
        「聞かなきゃ分からねぇの?」
        知らぬうちに丸見えにされた黒子の裸の胸元で、男はやわらかな膨らみに触れている。
        剥かれたジャージと体育着は首元まで大きくめくられ、不埒な意図をもった指の腹で胸の先を探られている。
        「……っ、どいて、ください。」
        「声も出さない相手にやってもつまんねぇし、これでやっと楽しくなるな。」
        上から圧し掛かっている睡姦魔の、穏やかでない喋り方はよく知っている。
        片手でベルトを外しながら笑っている人影は青峰に違いなかった。
        黒子は肘を立てて起き上がろうとしたが、乱暴に肩を押されて再び机に倒される。
        後頭部を軽く打ってしまい気が遠くなったその間にも青峰は黒子の両腕を掴み、獲物を覗き込むように顔を近付けてくる。
        あられもない姿で硬い机上に縫いとめられた黒子の姿態を、青峰は獰猛な視線で舐め回しニヤリと笑った。
        「やっぱ乳はあんまねぇな、まあいいぜ。俺を楽しませてくれるなら何だっていい。」
        「……っ、……やっ……ぁ、」
        裸の胸の、皮膚の薄い部分を口に含まれ、舌で押し揉まれて思わず腰が跳ね上がった。
        知るはずの無い少女の快感が無理やり身体になだれ込んでくるのを感じ、最低に惨めな気分になる。
        黒子の股を割っている青峰の脚に、下半身を摺り寄せてしまったのは故意ではなかった。
        しかし図らずも黒子がしてしまった挑発に気付いた青峰は嬉しそうに言った。
        「そう、……そうやって素直に反応してりゃ悪いようにはしねぇよ。」
        素肌にかかる吐息に、白い身体はますます震えてしまう。
        体温の高い男の身体を重く被せられて動けなくなった黒子は、青峰の荒々しい息づかいを間近に感じとっていた。
        思うように動かせず脱力した黒子の肢体を、渇いた指先が遠慮なしにまさぐってくる。
        「あ?何だこれ。」
        青峰は胸部の下、脇腹近くにある小さな痕を敏く見つけると一段低い声で呟いた。
        「……もう誰かの手付きになってやがる、好色なヤツだな。
         いや、目の色変えてんのは男の方か。俺も含めてどうせ群がってんだろ。」
        元よりあった内出血に舌を滑らせ、重ねてきつく吸い上げられる。
        さらに仕置きのように薄い胸の上にも一つ、ひと際熱い感触でマークを与えられた。
        「俺より先に世話したのは誰だ、ありえるのは黄瀬ぐらいか?」
        若干怒気を含んだ声で囁かれながらも、青峰の指先は下腹へ進み出し返事をする余裕を与えない。
        「口を割れねぇなら別にいい、先に、こっちを割らせてもらう。」
        青峰は黒子のジャージのウエストに手をすべり入れ、下肢の間を性急に探り始める。
        どこかぼんやりと鈍い感覚の中で、いつもの自分の持ち物ではない身体の芯をゆすられて硬直し、動けない。
        襲いかかる小刻みな震えに黒子は観念し、さらに唇を合わせようと顔を寄せてきた青峰の意に従った。



        「――――い、テツ、いい加減に起きろよ。」
        肩を軽く揺さぶられて、目を覚ます。机に突っ伏しているうちに眠ってしまったらしい。
        黒子がおもむろに顔を上げれば、前の席に腰かけ憮然とこちらを睨み付ける青峰がいた。
        「散々探しまくって結局、机で寝こけてるとか、お前ふざけんなよ。」
        「……どうもスミマセン。」
        苛々と不機嫌な青峰に唸るような声をぶつけられ、黒子は思わず謝ってしまう。
        「俺の目の前でぶっ倒れたくせにほっつき歩いてんじゃねーよ、他のヤツに紛れて全然見つからなかったっつの。」
        「確かにあちこち行ってましたけど、どこ探したんですか。」
        「あー…、保健室と職員室行ってから、諦めて部室で着替えてから、やっぱ図書室も覗いた。
         いるかと思って名前呼んだら、図書委員のヤツに思い切り睨まれたわ。逆に睨み返してやったら、すぐ隠れやがってよ。」
        いつも以上に横柄な青峰の軽口だが、今の黒子には変わらぬ日常を感じさせて安心できるものだった。
        「心配、してくれてたんですね。ありがとうございます。」
        「で、具合は良くなったのか。」
        「もうどこも悪くありませんから、それよりも部活に出てください。僕は赤司くんにお休みもらいましたし……、」
        ここで黒子は違和感に気付いた。青峰相手に、どうしてこんなに自然に喋れているのだろう。
        元に戻ったかと錯覚するような会話だったが、自分に軽く触れてみてもやはり身体は女だ。
        「あの、……青峰くんは、僕が黒子テツヤだと分かるんですか。」
        「は?お前テツだろ、違うのか。」
        「いえ、そうですけど。でも今は姿がその、」
        「赤司からさっきメール来た。女の格好したテツを見つけたら、日暮れまでは校舎から出るなっつっとけって。
         ……そのカツラは罰ゲームか何かかよ。」
        女装しているだけだと思われているのだろうか。青峰は当然のことのように、女生徒に扮した黒子の姿を受け入れている。
        身体のサイズが一回り小さいことや声が高いことに、気付かないふりをしているだけなのかは分からない。
        赤司の画策した何かだと思われているなら間違いではないし、改めて説明する必要はないだろう。
        「カツラは、演劇部まで借りに行きました。紫原くんのツテで。」
        「へぇ、よく出来てんな。」
        青峰は前の席に腰かけたまま、椅子を傾けて黒子の頭を撫でてきた。
        指通りのけして良くない人工毛を器用にすり抜け、耳殻から顔の輪郭まで触れられる。
        「くすぐったいんですけど。」
        「……くすぐったくしてんだよ、バカ。」
        好き勝手してくる青峰に囁かれて何故か肩が震えてたじろいでしまった。
        いつもならこんな風にはならないのに、青峰の声色に身体が反応しているということだろうか。
        制御しきれない外と内の動作のずれに、黒子の意識はまた不安定になる。
        「どんな姿してたって俺から見たら顔が同じだ、見間違えるはずないだろ。
         自覚はないだろうが、結構いい顔するんだよお前は。」
        その言葉に今度は胸がざわつく。訳が分からず混乱する黒子の様子に構わず、青峰は触れていた手をようやく離した。
        「赤司絡みで妙な事に巻き込まれてんだろ。でもやり過ぎだな、何考えてんだか。」
        青峰は切れ上がった目で一見清楚な女生徒の黒子を眺めている。
        威圧的な視線は慣れてしまえば、心強いものに感じられる。
        「とにかく早く元に戻れよ、一緒にバスケできねぇのは困る。」
        「ちょっとだけなら今からでも付き合いますけど。第四体育館で。」
        「いらねぇよ、……怪我させちまいそうで怖いし。」
        ここで弱ったように視線を外した青峰はやはり黒子の身体の異変に気付いているらしい。けれど具体的な話は避けてくれている。
        気遣ってくれているのか、関わるのが面倒なだけなのか、おそらくはその両方だ。部内で一番付き合いが長いから分かる。
        実力不足に悩んでいた黒子が三軍でもがいていた頃からずっと、二人は居残って一緒に練習をしてきた。
        才能を見出され一軍入りできた今もずっと、青峰にパスを繋げる相棒として恥ずかしくないよう励んできた。
        けれど今の状態は青峰から見ても滑稽に思えるだろう。迷惑をかけてしまう、共に練習が出来ないのが何より辛い。
        「僕も身体がなまるの嫌なんで、本当は練習したいです。けれどスミマセン、今日は誰か別の人と…、」
        「勝手に代役をあてがうなよ。」
        「……でも、」
        「お前の代わりなんてどこにも居ないし、作ろうとも思わない。だからさっさと治して来い。」
        あくまで普段の黒子を欲する青峰の言葉を聞いてしまい、とうとう目の端からは涙がこぼれてしまった。
        簡単に泣き出す性質ではない。けれど内面の感覚と、それを覆っている外面のフォルムにはずれがある。
        黒子特有の気丈な心に、器になっている柔和な身体が耐えきれなかった。
        本来の自分を求めてくれて嬉しい、迷惑をかけてしまい悲しい、けれど待っていてくれて嬉しい。
        女扱いしないでほしい、いつも通りに接してほしい、間違っても倒錯しないでほしい。僕は男だ。
        赤司や黄瀬の前で嫌というほど晒された女性である自分に、最悪な想いをしてどうにか耐えてこられたのに、
        結局青峰の前で泣き崩れてしまった女々しさに次々と涙があふれる。気持ちが悪い。
        しずくを拭う黒子に驚いた青峰は席を立ち、座ったままの黒子の肩を机越しに抱き寄せた。
        「泣くな、バーカ。」
        「……こんなはずじゃ、なかった……んですけど。」
        「そんな身なりじゃ不安になるのは当たり前だし、周りが気を遣うのも仕方ないだろ。
         今の自分の容姿がどんなものか、いい加減に認めろ。」
        「でも女の子の姿だから、こうして慰めてくれるんですよね。」
        「難しいことは考えてねぇよ、俺の厚意をお前が測るな。男だの女だの、性別を一番気にして突っぱねてるのはテツだろ。
         他のヤツらだってたぶん細かい事にはこだわってなさそうだぜ。喋ってるの、見てれば分かる。」
        「女の僕は……おかしくないですか。」
        「何をそんなに気にしてんだ。これまで会った誰か一人にでも、そんな風に言われたか。」
        「いいえ、誰も。でも……キミは?」
        「すやすや寝てるの見たときは完璧女に見えたぜ、ビビるぐらいよく出来てるよ。こうして喋れば全然違うけどな。」
        「……さっさと起こしてください。」
        「嫌だよ、あれは据え膳だったろうが。」
        乱暴な青峰の言葉と、抱き止められたシャツに染みこんだ涙の跡で、ようやく落ち着きを取り戻す。
        黒子は青峰の身体からそっと離れた。青峰の方も無理にとどめようとはしなかった。
        「とにかく、誰も普段のお前の事を忘れたりはしてないんだから、全部が敵みたいな顔をするな。
         逆に全部が味方だってくらいに思ってても言い過ぎじゃないくらいだ。そんでもって、早く治せ。」
        「……けれど治せる方法が分かりません、赤司くんにははぐらかされましたし。」
        「じゃあ緑間だな、頭使えるので今から頼れるのは他に思い当らない。赤司は何考えてるのか全然読めねぇし。」
        「そうですね、緑間くんに話をしてきます。委員会に出てるってさっき言ってましたから。」
        開いていたジャージのファスナーをあげ、黒子は席を立つ。青峰は飲みかけのペットボトルを手に取り一気に煽った。
        元は黒子のものだった温くなってしまったそれを、平気な顔で飲み干してしまう。
        「まだ心細いなら、付いてってやるけど?」
        「これ以上ここに居るの、不味いんじゃないですか。キミもするべきことをしてください。」
        「……ったく変り身早過ぎんだろ、じゃあ戻るわ。
         日暮れまで校舎から出るなって、赤司の変な言いつけもちゃんと覚えておけよ。」
        「あの人にも他の考えがあるんでしょう。……日没まで、まだ時間はありますよね。」
        青峰は空のペットボトルを片手に出ていった。
        教室のカーテンは知らぬうちに締まっていたので少し寄せて校庭を覗けば、雨はまだ大降りで。
        分厚い雨雲の流れる空は明るさを変えず、陽が落ちるのを待っていた。