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              秋波さざなみ  







        「先輩からの善意は、・・・・・断りにくかったので。」

        日向から手当てを受けながらも、黄瀬との密事を思い返す。思い返しながら、
        誰にも触れさせてはいけないと言われていた患部を、その原因になった行為と同じ体勢で差し出している。
        踵を持ち上げられながら。
        折り重なった偶然の連鎖がひどく淫靡なものに感じられて、だから心揺れたのだと。
        浮気と錯覚するような居たたまれない衝撃だったのだと、黒子は平淡な口ぶりで語った。
        「そんな顔して、疑わないでください。」
        ベッド上に組み敷いて腕の間に閉じ込めるようにしていた黄瀬を見上げ、強い視線を浴びせてくる。
        「君以外の誰と、こんなことするんですか。」
        熱を浮かせた目元のまま言い切った黒子を、黄瀬はそのまま落下するようにうつ伏せて、抱きしめた。
        「・・・フツーに重たいんですけど。」
        「浮気、とか言うから、・・・・・内心すっげー焦ったんス。」
        言いながら、黒子の頭部を抱き込み顔を埋める。
        少し湿った髪の毛と汗の匂いに誘われ、耳たぶとその裏側に舌を這わせた。
        「そんな事まで、」
        「・・・黄瀬、く・・・・・・、」
        「正直に言わなくていいのに。・・・本当しょうがないっスね。」
        耳への刺激にぞくりと背筋を強張らせ、たじろぐ声色で自分の名を呼ぶ黒子の片腿をつかみ
        半ば強引に持ち上げる。華奢に見えてしっかりと芯のある骨格を確かめるよう黒子の足の輪郭を辿り、
        手当された足裏の傷跡にも触れる。
        「俺、とのこと、・・・・・思い出してくれたのは嬉しい。」
        片足を踵ごと捕らえ指先をかませ、疑いが晴れたところで黄瀬はようやく安堵した。

        「・・・・・ぁ、・・・・・・、っ・・・・」
        「息、ちゃんと吸って。」
        「・・・っ・・・・、熱、・・・、・・・・・。」
        「ん、何。」
        「なんでキミ、こんな・・・熱いんですか・・・。」
        「・・・・・、何でっ・・・・・て、」
        「・・・・・・・・、・・・・・・っ・・・。」
        「あ。」
        「・・・・っ、・・・急に、大きく・・・しない、で、ください。」
        「だって黒子っちが、煽るような事言うから・・・っスよ。」
        「馬鹿、・・・言っ、・・・ぃ・・・で・・・・・。」
        「熱いとか、んな事言われたら、たまんなくなるっス。」
        「・・・も・・・、離し・・・・・、」
        「黒子っちだって、ちゃんと熱くなってるし。」
        「・・・・っ、・・・・・・っ、・・・、ぁ・・っ、」

        黄瀬の爪先はけして長過ぎず、綺麗に切り揃えられていたけれど。
        揺さぶるよう動いてしまううちに、毎回黒子の足先に小さな傷をつけてしまう。
        寄り添う頻度の高さを証明するように、それは2人にとって慣れ親しんだ傷跡になっていく。

        「ひょっと・・・し、て、・・・怒って、」
        「こんな好きでどうしようもないのに、・・・・・んな訳ないじゃないスか。」
        本当に、怒ってなどいなかった。
        腰を持ち上げて割り入った身体で、少し冷めてしまった黒子の手足の体温を直に感じてしまい
        黄瀬は不穏な疑いをかけた自分と、安心しきってセックスに溺れる自分の変り身の早さを申し訳なく思う。
        言葉では何とでも言えるが、行動が伴っていないようであまりに不誠実ではないか。
        黒子とは真逆で、口数の多い己の性質がなお腹立たしく思えた。

        しかし黄瀬の言葉を聞いた黒子は一度目を伏せてから、無言のまま黄瀬の首に手を回してきた。
        正面から抱きつかれたまま顎を寄せられ、ねだるような軽い口づけを受け取る。
        「・・・・・・僕も、そんなキミが好きですよ。」
        不安定な心境を、見通していたかのように絶妙のタイミングで最高の言葉をくれる。
        ためらいながらも、黒子の理性はもうほどけかけているのだろう。
        ここまでの本音は滅多に聞かれない、その証拠だ。余計止められなくなる。

        「ね。離してあげるから。中、そのまま出していい?」
        「・・・ぁ・・・とで、大変なの、・・・わかってますよね。」
        「うん、でも・・・・」
        「・・・・・・・・・・・。」
        「今日は、一滴残らず・・・出し切りたい気分で。」
        「っ・・・・・・・・、黄瀬、くん、」
        「我慢できない。」
        「・・・・キミは、正直過ぎます・・・・・・。」

        黒子は呆れたような声で呟いたが、その文句とは裏腹に黄瀬を逃がさないよう、
        途中で意識が途切れないよう、甘えるように抱きついてきた。
        言葉少なに行動が先行する。そして目は口ほどに、時にそれ以上に雄弁だ。
        黒子は眉をひそめ困惑している様子だったけれど、やはり涼しいままの目元に少しだけ火照りを浮かべて、
        黒子を揺らしたい黄瀬の要求を許していた。